~*・。花鳥風月。・*~

自然の美しい情景。 風流な遊び。

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菊一文字

その日、オニギリはいつものように砥ぎ場へ向かった。
丹念に、そして一心にノミを研ぐ。砥ぎ終えたその切っ先は、まるで鏡のように光々と輝き、そこに映るオニギリの顔は哀れにも褒めどころのない顔ではあったけれど、その仕上がりはまさに、名刀菊一文字と見まごう程であった。

その日の工程は、少しばかり長めになっている側板の、はみ出している部分を切るという作業であった。
木目に対して、直角に刃を入れる必要があった。

そのために彼は、いつもよりもほんのちょっとだけ丹念に刀(ノミ)を砥いだわけである。


「ふふふ・・・我が刀の切れ味!とく見よ!」

ノミを入れると、まるで豆腐でも切っているかのように刃が木に吸い込まれていった。
なんという心地よさであろうか。
刃が意思を持ち自ら木を切っているのではないかと錯覚するほど、その日のノミはよく切れた。

オニギリは思った。
「俺って腕上がったんじゃね?」

哀れにも自分はストラディの生まれ変わりなのではないかというところまで自意識が昇華した、まさにその時、彼は刃先にかすかな違和感を感じたのだった。



オニギリは阿呆であったけれど、その時、確かに刃先に嫌な抵抗と危険を感じとっていた。
しかし、不幸にも根拠の無い自信にも満ち溢れていた。

I can fly...
彼はブツブツと何かをつぶやいて、ぎゅうとノミを握りなおした。

「我が剣に切れぬもの無し!!」

南無三!!


バキッ!!





側板割れ


つづく・・・。
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